MUTEKは、電子音楽の新たな地平を信じる者にとって、唯一無二のプラットフォームだ
DAY1:WWW
MUTEK.JP 2025の初日は、WWWで開催された。
ここはFunktion-Oneを導入している、東京でも稀有な音響を誇るベニューだ。
ステージには、長年活動を共にしてきた石橋英子&ジム・オルークに、ドラマーのジョー・タリアを加えたトリオが登場。
元映画館というWWW特有のすり鉢状の構造が、観客の集中力を自然とステージへと収束させていく。
シカゴ出身で現代音楽とポストロックの架け橋的存在であるジム・オルークは、科学者のような手つきでシンセサイザーの周波数を操る。
そこに石橋とジョーが無定形のハーモニーとリズムを織り交ぜ、電子音と生音が高度に融合したサイケデリアを提示した。
初日のトリを飾ったのは、MUTEKの本拠地・モントリオールを拠点とするマルタン・メシエ。彼は10年以上にわたり、光と音、そして動きの境界を再定義するパフォーマンスを続けてきた。
この日、日本初公開となった『1 Drop 1000 Years』は、海洋熱塩循環システムの重要性と脆弱性を描く没入型オーディオヴィジュアルパフォーマンスだ。
水滴が落下する速度やストロークを光と巧みに同期させる装置には、先進技術の面白さと美しさが共存しており、オーディオヴィジュアルが単なる「映像表現」に留まらないことを改めて認識させてくれた。
DAY2:O-EAST
SPOTIFY O-EASTに舞台を移した2日目には、ベルリンを拠点とするアルヴァ・ノト(カールステン・ニコライ)が、10年の時を経てMUTEK.JPに帰還。
彼は、カンディン・レイやアトム・ハート、ダシャ・ラッシュといったテクノアーティストを輩出してきた伝説的レーベル「Raster-Noton」の設立者でもある。(1999年設立、拠点は旧東ドイツのケムニッツ)
今回は「聴覚的宇宙生成論」に基づくプロジェクト『HYBR:ID UNI PARA』を披露した。
そのライブセットは、序盤こそ静謐な緊張感を漂わせていたが、次第にアブストラクトかつパワフルなサウンドへと展開。後半にかけて狂気を帯びつつも、テクノ特有のポップネスを感じさせる構成で、フロアの熱量はいつの間にか最高潮に達していた。サウンド、アート、デザインの融合というアプローチを長年追求してきた彼の軌跡を感じさせる、圧巻のショーであった。
MUTEK.JPは、電子音楽の新たな地平を信じる者にとって、唯一無二のプラットフォームだ。
客層は単に踊りに来たクラバーというより、真摯に音に耳を傾けるリスナーが多い印象を受けた。
特に若い世代のアーティストやDJには、5,000円という破格のU-25パスを活用して、ぜひこの体験に触れてほしい。